小さな訪問者からのメッセージ: 信じる心の飛躍
- Junko Saragih
- 6月13日
- 読了時間: 6分
更新日:9月18日
最初の化学療法から一週間後、私の手のひらにそっと舞い降りた小さな命。
その静かな奇跡は、恐れに満ちた日々の中で、「信頼」と「つながり」の大切さを教えてくれました。コロナ禍と重なる気づきの旅を、愛と祈りを込めて綴ったエッセイです。
このエッセイは、2020年3月、パンデミックの最中に英文で書いたものを日本語で再構成し、
ブログ用にまとめ直しました。(読む時間の目安:6分)

目次
1. 静けさの中に訪れた小さな命
昨年(2019年) 9月のある早朝、私たちのもとに一羽の小鳥が訪れました。それは、私が最初の抗がん剤治療を受けてからちょうど一週間後のことでした。その鳥は、アパートの入り口のすぐ外にじっと座っていました。
最初は、死んでいるのか、ケガをしているのかと思いました。でもそうではありませんでした。私たちが近づいても飛び立たず、そのままじっとしていたのです。私はそっと手を伸ばし、手のひらに乗せて、頭を優しくなでました。すると彼は目を閉じ、まるでその感覚を受け入れているかのようでした。
私たちはしばらくの間、その静かな魔法のような時間を分かち合い、やがて彼は自然の中へと飛び立っていきました。
あの出会いの意味をずっと考えていましたが、最近の新型コロナウイルスの流行が始まってから、その意味がよりはっきりと見えてきた気がします。
2. 社会に満ちる「恐れ」の波
私たちは感情を持つ存在です。そして今、社会全体として大きな「恐れの波」を経験しています。個人的にも、世界中に広がる影響を見ながら、不安のエネルギーが私の中にも押し寄せてくるのを感じています。
恐れには二つの種類があると思います。ひとつは、目の前の現実的な危険に対するもの。
もうひとつは、「未知」に対する恐れ。今、私たちの多くはその両方を同時に感じているのではないでしょうか。
恐れには意味があります。でも、冷静な判断を欠いたとき、それは混乱やパニックを引き起こしてしまいます。
恐れは、私たちの「生存本能」を刺激します。エネルギーは収縮し、視野は狭くなり、自分のことで精一杯になります。「戦うか逃げるか」という反応に陥り、「未知への恐れ」は霧のように思考を覆い、私たちの直感的な判断力を鈍らせてしまいます。先が見えない不安が、「きっと何か悪いことが起きる」と思わせ、防衛本能から買い占めのような行動に走ることもあります。
メディアは恐怖を利用して人々をコントロールしようとします。ニュースや広告を見たあと、自分の心がどう感じているかに注意を向けてみてください。どれほどの頻度で、心から笑顔になれるような話題を耳にしているでしょうか?
私たちの日常的な選択の多くも、実は「恐れ」を基盤にしていることが多いのです。恐れは有害でありながら中毒性があります。タバコやお酒、ネット動画のように。それは私たちの意識の深い層に染み込み、時にアイデンティティの一部にすらなってしまいます。
3. 恐れがつくり出す「分離」の構造

私たちの集合意識は、空を舞うムクドリの群れのようなものです。空中で群れが同調しながら、美しいパターンを描くように、私たち人類の意識も繋がっています。
でも、今の世界のパターンは、バラバラで調和を欠いているように感じられます。それが「恐れ」のもたらすものです。恐れは「私」と「あなた」、「私たち」と「彼ら」という分断を生み出します。
この分離こそが、被害者意識、責任転嫁、偏見、怒り、悲しみ、そして恥といった感情の根本原因のひとつです。
4. 太陽と月が教えてくれること
私たち人類は、長い歴史の中で何度も、胸が張り裂けるような悲劇と残酷さを経験してきました。それは、私たちが「すべてはつながっている」という真実を忘れてしまったからです。
太陽は、分け隔てなく地球全体に昇り、沈みます。私たちは皆、同じ月を見上げて生きています。この「当たり前の真実」を思い出したとき、「あなた」と「わたし」、「わたしたち」と「わたしたち」の世界が生まれていくのだと思います。
5. 誰もが役割をもって生まれてくる
私たちは皆、それぞれ異なるブループリント(魂の設計図)を持って生まれてきました。個々の経験が全体に貢献しています。誰かが優れていて、誰かが劣っているということはありません。
たとえ「悪」と見える存在でさえ、その人なりの役割を担っているのです。むしろ、そういった存在こそ、私たちに自己を映し出す鏡となり、「もっと優しく、もっと深く生きよう」と気づかせてくれる偉大な教師なのかもしれません。
あらゆる状況には、常に学びの種が宿っています。
6. ヒマラヤを越えるガンたちからの学び
以前、ヒマラヤ山脈を越えるガンの群れのドキュメンタリーを見たことがあります。その群れは、何度も何度も繰り返しチャレンジをします。先の見えない嵐や強風に翻弄されながらも、ただ「信じて」飛び続けるのです。

信じる心の飛躍。
それが、あの小鳥が私に伝えたメッセージでした。
彼がやってきたのは、私が初めての抗がん剤を受けてから一週間後のこと。まだ3回も治療が残っていて、心の中には不安と恐れがいっぱいでした。
でも、彼は私を信じて、私の手のひらに身を委ねてくれました。そのやわらかく小さな命をそっと包んでいるとき、「私も信じてみよう」と思ったのです。きっと大丈夫。この道は、私にとって変容の旅になる。そう信じて、私は自分自身に「飛ぶ許可」を与えました。

7. 恐れの下に流れる「希望」の風
今、私が感じていることは、昨年のあの時期ととてもよく似ています。そしてきっと、多くの人が同じように感じているのではないでしょうか。
個としてできることは限られているけれど、「ひとつの意識」としてなら、私たちはもっと大きなことができる。
パンデミックはいつか終わるでしょう。
でも、人類としてのチャレンジは、まだまだ続いていきます。
私たちは以前の世界に戻るのでしょうか?それとも、その先へ進もうとするのでしょうか?
2020年、私たちは一人ひとりが「自分の闇」と向き合い、それを超えていくチャンスを与えられています。そして新しい意識の波を創り、まだ見ぬ世界へと羽ばたく可能性があるのです。
恐れという荒波の下には、新鮮な風と、自由な空気が確かに流れています。
変容は、私たちのエゴにとっては困難に思えるかもしれません。でも、それは本来とても美しいプロセスです。
信頼してその一歩を踏み出したとき――嵐のあとには、いつも青空が広がっているのです。
私は知っています。その先には、きっと虹が待っている。
その空にかかる虹を、私は信じています。

愛を込めて。
JUNKO
2020年3月29日


コメント